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ガラムマサラと水底の小石たち。

近所にインドカレー店があり、その怪しげなムードとカレー好きが相まってバイトの打診をしたことがある。歩いて3分だし、と思っていたらなぜか千駄木に呼び出され、なぜか千駄木本店にて、働かせてくださいと言ってしまった。それがインドカレーDです。
面接でオーナーに見初められ、ホテルのバーにまで連れていかれてしまった。。オーナーはインドの方です。
まあもちろん何もなかったが、多くの面接者がそのような待遇なのだろうと思ったらわたしだけだったと後から聞く。なので内心これは好待遇だぞと期待して入ったら、
テーブルをグーで叩き付けて怒られたり、お客さんの目の前で大声を出されたり、なんだかもーほんとにすごかった。なんじゃこの人格の豹変わ!という感じ。怒った後、わっはっは!と大笑いして肩をすくめるし(こっちはビクッとなる…)。もちろんわたしだけでなく皆に対してそうであり、皆が諦めつつ呆れつつ、愛するナイスなオーナーだった。
しかしわたしはそんな些細なことで(本当に些細なんだもん)怒られて心を傷めてる場合じゃない、絵に影響が!と思いすぐ辞めてしまった。掛け持ちでやっていた飲食店が素晴らしかったのでそっちに絞った。そして長く働いたよ…。
なのにインド人オーナーはその後も絵画部門で呼び出して下さり、一時期他に2人集い、3人で内装屋をやらせてもらっていた。何店鋪かの床や看板やメニューを描かせてもらった。辞めてから数年は付き合いがあった。
その内装屋の数回の仕事は、自由で文化祭の前夜みたいな、どこまでも広がってくような明るい作業だったと記憶する。たった3ヶ月で辞めたわたしを、その後も呼び出してくれて、たいそうな、でもはてしなく自由で小さな仕事を与えてくれたのは今でも感謝だ。そしてその内装屋の、ちょっと情けなく、でも懸命な、子どもみたいにずっと阿呆話をしながら作業したあの時間は、何にも代え難い大人になってからの綺麗な思い出だ。今では透明な水の底を見るような気持ちで、それを想う。
by nemotyucac | 2007-02-27 03:52 | travel and stroll

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