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夜行列車

オルビスという化粧品のCMにてはなちゃんが、夜行列車で旅をしている。
ちょうど先日の鳥取旅行の、行きが、夜行列車だった。それを思い出す。あの、切ない車内。まるで修学旅行のような寝る前のひととき。きっとあの瞬間から、旅はそんな空気を漂わせていたのだ。
眠れなくて二人で缶ビール片手にサロンにいた。夜の風景がびゅんびゅん過ぎてくのをぼんやり見ながら、とりとめのない女子トークを静かめに話した。よい時間だった。光がしゅんと去ったり、急に灯りもないしんとした土地に差し掛かったりして、静かに夜を感じた。
朝、目を覚ますとカーテンから光が漏れて、そこから斜面の緑が見えた。両サイドを山に挟まれて列車はぐんぐん力強く進み、数時間後に到着する先の、わくわくがどんどん近付いて来るのを実感できた。
山には桜の青味がかったピンクがぽっと、くっついていた。満開だった。

天気は一時も晴れなかったけど、今胸にある旅の景色は、淡いピンクで彩られてる。その色が旅の最初から最後まで流れていたし、広がってた気がする。きっと行きの列車の東京から乗り込む瞬間から、いやスカートひらひらさせながら現れた友だちに会った瞬間から、流れ出た色なんだと思う。旅ではないような、夜の学校にこっそり集まって秘密の遊びをするような、ちょっとこそばゆい青春の匂いみたいなもの。
旅の間に誕生日があってとてもいいトシになったけど、その日に向ってく日々を一人や二人でなく、三人で、そして友だちの御両親や愛猫や愛犬とで迎えたりして、やっぱりあの日々は夢見心地だったと今も思う。夢で描いていたようなことが次々に起こったり光ったりした。遠くに夕日が沈む海があり、深い波があり、白い風力発電の風車がゆったりまわるのを背景に、桜があった。どれもすごく光を放ってた気がする。
あのCMのガタゴト揺れる車内のようすや車窓の風景や、海を背に座るはなちゃんなんかを見てると、きゅうっとなる。きっとこのCMが流れなくなっても、似たようなものを見る度にきゅうっとなるのだろう。旅が胸を時々、忘れた頃に、痛くする。旅のいいところはそうゆうことだと思う。
by nemotyucac | 2006-05-14 03:04 | travel and stroll

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